空き家とそのリスク、対策

相続人全員に持ち家があり、両親の他界や施設入所などにより、実家が空き家になるケースが全国的に増えているということが空き家が増加している原因の一つです。平成30年の住宅・土地調査統計によると全住宅の13.6%が空き家とのデータもあり、今後、空き家は増加することが予想されています。少子高齢社会に突入し、子を持たない人が増加していることを考えたとき、空き家はますます増えていくことは確実なことといえます。
空き家には、住宅環境の悪化や犯罪の温床につながることのほか、倒壊のおそれがあるなど多くのリスクがあります。ところが、空き家を取り壊して更地にすると、固定資産税が跳ね上がるため、空き家のままでも家屋を残しておきたいという現実的なニーズも存在します。
そこで、 空き家対策の第一歩として、空き家状態を解消するための活用方法をできるだけ早く検討するということが大切です。活用方法としては、①売却、②賃貸、③リフォームをして活用する、④解体して新しく建物を建てる、⑤解体して更地として活用するといったことが考えられます。
いかなる空き家対策を実施するにせよ、空き家対策をすることのできる権限を、相続人のうちの一人に集中しておくということが重要なポイントになります。

遺言書作成

遺言書がなく相続手続が開始すると、遺産分割協議が必要なため空き家を相続する相続人がいない限り、その物件は、相続人共有で、空き家のまま放置されることになります。更地にしてしまうと、固定資産税が跳ね上がるといった問題がありますし、駐車場を設置するといったケースでも、初期費用の投資が必要になります。そのため、相続人共有の状態にしておくと結局手つかずのまま、空き家として放置される期間が長期に渡り、空き家リスクも増大します。
空き家対策をめぐって相続人間で意見の対立が発生することも考えられますので、相続人の共有状態はできるだけ早期に解消することも重要です。空き家法が制定された現在、空き家法に基づく勧告を受けると、更地のケースと同様、固定資産税が跳ね上がるという不都合もでてきました。
そこで、空き家の権利者をできる限り早く決めるためにも、あらかじめ遺言書の作成を通じて、将来空き家となる可能性のある家を相続する人を決めておくということが大切です。

ビジネスとしての利活用

持ち家を有し、住むつもりがない家族にとっては、ただの「空き家」でも、利用価値を感じる人は多くいます。カフェ、オフィス、保育園やグループホームとして利活用するなど、空き家の活用や運営をしたいと考えている人々は多くいます。
将来の活用を考えるために、現時点での対応として、空き家の敷地の草刈りをすることやリフォームをすること、借り手を探してもらうといったことを検討することも大切なことです。空き家を残したまま売却を考えたり、更地にして売却するために建物を解体したりすることも、有効な空き家の活用方法といえます。
空き家の活用を検討するにあたっては、信頼できる事業者を選定したうえで、契約を締結して物事を進めていくという作業が必要になります。行政書士は、事業者と空き家オーナーの間に立って契約書(請負・売買・賃貸借・使用貸借など)を作成することを通じて、事業者の選定に貢献するとともに、両者の利益を図る公正な契約締結を実現することができます。空き家対策の総合的な窓口として行政書士を活用することで、空き家問題解決の見通しをつけることが可能になります。

民事信託の活用

相続人が空き家となる予定の実家に関心がない理由は、相続人全員に持ち家があり、利用価値を感じていないところにあります。そこで、利用価値を感じてもらうためにも、あらかじめ民事信託に関する契約書の作成を通じて、物件の処分や管理を、相続人のうちの誰かに一任しておくということも一案です。
将来、空き家になる可能性の高い物件を信託財産の一つにして、民事信託を活用することで、その物件を任された受託者は、信託目的に応じて、いつでも自由に、その物件を処分あるいは管理することができます。
相続人でもある受託者は、空き家になる可能性の高い物件を、空き家になる前から信託財産として管理していますので、空き家になった時点で、どのような対応をすればよいかということを検討する時間的な余裕があります。物件が老朽化する前の時点で、当該物件の利用方法について検討することもできますので、物件を利用したいという思いも強くなります。
財産管理の面でも、民事信託に関する契約書の作成は役立ちます。たとえば、施設入所により実家が空き家となる際に、施設への高額な支払いに備えて、実家を売却できるようにしておくために、民事信託に関する契約書を作成しておくといったケースです。後見人が付されると、施設入所の費用負担のために実家を売却することが手続き上面倒になりますので、元気なうちに民事信託に関する契約書を作成し実家を売却できるようにしておくことで空き家対策になるとともに、財産の有効活用にもつながります。

相続土地国庫帰属制度の活用

令和5年4月27日からは、相続によって取得した土地で、一定の要件を充足する土地については承認申請手続きを通じて、国庫帰属させることのできる制度が導入されます。これが相続土地国庫帰属制度です。
市街化や農業振興が抑制されている地域内の宅地や田畑については、土地の広さに関わらず、一律20万円の負担金を負担することで、当該土地の所有権を手放すことができます。雑種地や原野であれば、いかなる地域にあっても、いかなる広さであっても、一律20万円の負担金になります。
市街化や農業振興を図る地域にある宅地や田畑、あるいは森林については、面積に応じた負担金の算定式があり、それに応じて、負担金を計算することになります。
令和6年4月1日から相続登記の義務化がスタートし、相続により不動産を取得した相続人は3年以内に相続登記をしなければならないことになりますが、相続土地国庫帰属制度は、相続登記を経由せずに利用することも可能です。

行政書士の役割

行政書士は、 契約書(請負・売買・賃貸借・使用貸借など)の作成を通じて、空き家対策のための支援体制を構築することができるとともに、遺言書や遺産分割協議書、民事信託契約書の作成を通じて、早い段階で空き家対策を実施することのできる権利者を確定することができます。不動産業者やリフォーム業者、造園業者や家財整理業者、解体業者といった専門業者のほか、司法書士や税理士といった専門家などにつなぐことのできるパイプ役となって、空き家の対応にお困りの方のお役に立ちます。
空き家対策のための総合窓口として、行政書士をご活用ください。
(報酬)
遺言書の作成
5万円(税込55,000円)
遺産分割協議書の作成
5万円(税込55,000円)
契約書(請負、売買、賃貸借、使用貸借など)の作成
5万円(税込55,000円)
民事信託契約書の作成
25万円(税込275,000円)
承認申請書の作成(相続土地国庫帰属制度)
5万円(税込55,000円)