自動車を使用し、他人の需要に応じて有償で貨物を運送する場合、一般貨物自動車運送事業として緑ナンバーの取得が求められます。軽自動車を使用する場合は、貨物軽自動車運送事業として黒ナンバーの取得が求められます。
緑ナンバー(一般貨物自動車運送事業)を取得するためには、一定の項目ごとに公示基準に適合することが必要です。①営業所、②車両数、③事業用自動車、④車庫、⑤休憩・睡眠施設、⑥運行管理体制、⑦資金計画、⑧法令順守、⑨損害賠償能力について、基準が設けられおり、これらの基準をクリアできるように事業計画を作成することが求められます。
公示基準をめぐって
1.営業所
使用権原を示す資料があること、農地法・都市計画法・建築基準法などの関係法令に違反しないこと、規模が適切であること、必要な備品を備えており事業遂行上適切なものであること、といったことが求められます。
土地の登記事項証明書上、農地である場合や都市計画法上、当該土地が市街化調整区域内である場合は、営業所の設置ができないケースがありますので、土地購入や賃借をする前に、事前調査をする必要があります。詳細につきましては、営業所の設置予定土地を教えていただければ調査いたしますのでご相談ください。
さまざまな角度から撮影した写真を提出することを通じて、営業所がどのような形態のものか、外観や内装、営業所としての機能を有しているかなどが判断されます。
2.車両数
原則、営業所ごとに5両以上の車両を配置することが求められます。けん引車と被けん引車を含む場合は、両方で1両と算定されます。
3.事業用自動車
使用権原を示す資料があることのほか、大きさや構造が、輸送する貨物に適切であるといったことが求められます。
車検証を提出することにより、事業用自動車として活用できるか否かが判断されます。
4.車庫
導入予定の車両がすべて収容できる車庫の大きさが求められます。車庫は車両の前後左右に50㎝以上のスペースが求められ、50㎝以上のスペースがない場合は、車庫として認められませんので注意が必要です。市街化調整区域であっても、車庫として認められることもありますので、調整区域に車庫を設置予定の方はご相談ください。
5.休憩・睡眠施設
6.運行管理体制
7.資金計画
車両費、建物費、土地費、保険料、各種税、運転資金といった所要資金の見積りが適切であり、資金計画に合理性と確実性があることが求められます。所要資金を上回る自己資金が、申請日以降許可日までの間、常時確保されていないと「資金計画」の基準は充足しません。
資金計画は、申請時の残高証明書の提出と審査途中の残高証明書の提出の2度の残高証明書の提出を通じて、自己資金が所要資金を上回っていると判断される必要があります。
8.法令順守
9.損害賠償能力
自賠責または自賠責共済に加入するほか、任意保険に加入するなど「十分な損害保障能力」を有することが求められます。
手続きの流れ
1.申請書の作成
2.営業所を管轄する地方運輸支局にて、申請書の提出
3.法令試験の実施と申請内容の審査
4.許可後1年以内に、
(1)運行管理者・整備管理者の選任届
(2)運輸開始前の確認報告
(3)車両の登録
(4)運賃料金の設定
(5)運輸開始
事業計画の変更
自社の経営状況や物流状況を踏まえ、営業所や車庫の新設・移転・廃止、事業用自動車の増車・減車などの経営判断をしなければならないときがあります。このとき、行政庁から認可されている事業計画の内容に変更が生じるので、申請や届出を通じて、変更内容について情報提供をする必要があります。これが、事業計画の変更といわれる手続です。
【営業所】
物量の増加にともなって新たに営業所を設置したり、従来の営業所を廃止し新しい営業所に移転したりするなどして、顧客ニーズに対応しなければならないことがあります。営業所を新しく設置するためには、事業計画の変更が必要です。①新しい営業所の名称・場所・電話番号、②運行管理や整備管理の体制、③ドライバーの確保に関する事業計画が求められます。また、営業所を機能的に運営できるかどうかを確認するために、①使用権原を証する書類、②農地法・建築基準法・都市計画法などの関係法令に違反しないことの宣誓書、③営業所の案内図、見取図、平面図、写真の提出が求められます。
【車庫】
車庫は原則、営業所に併設する必要がありますが、併設できない場合は、営業所と車庫の距離について特例が認められています。営業所を東京都特別区、横浜市、川崎市に設置する場合は、20㎞以内、それ以外の地域に設置する場合は、10㎞以内であれば、営業所に併設していない車庫を設置することができます。
このような特例を活用して、新しく営業所を設置することなく、車庫の新設と増車対応により、顧客ニーズに対応することが可能です。経済的観点からしても、車庫を新設する方が、営業所を新設するよりも経済的負担は少なく、少ない投資で大きな収益をあげることができます。車庫の新設にも、事業計画の変更が必要です。①新しい車庫の収容能力、幅員、位置、②運行管理や整備管理の体制に関する事業計画が求められます。また、車庫を機能的に活用できるかどうかを確認するために、①使用権原を証する書類、②農地法・建築基準法・都市計画法などの関係法令に違反しないことの宣誓書、③車庫の案内図、見取図、平面図、写真、④車庫前面道路の幅員証明書の提出が求められます。
【増車・減車】
自社の輸送力を強化するために、自動車の配置台数を増加させなければならないことがあります。また、古くなった自動車は新しい自動車と入れ替える必要もでてきます。このようなニーズに対応するためには、増車・減車に関する事業計画の変更が必要です。最低保有台数5台を下回る減車かどうか、駐車場の収容スペースが確保されているかなど、一定の基準をクリアする必要があります。
事業報告書、事業実績報告書の提出
一般貨物自動車運送事業は、一度許可されると、事業の廃止や事業の休止の届出をしない限り、半永久的に継続し、更新制度もありません。一般貨物自動車運送事業者に求められることは、毎事業年度の経過後100日以内に事業報告書を提出することと毎年4月1日から3月31日までの実績を事業実績報告書として、7月10日までに提出することです。管轄の運輸支局は、これらの報告書を通じて、事業者の実態を把握することができます。