自動車を使用し、他人の需要に応じて有償で貨物を運送する場合、一般貨物自動車運送事業として緑ナンバーの取得が求められます。軽自動車を使用する場合は貨物軽自動車運送事業として緑ナンバーではなく黒ナンバーの取得が求められることに注意が必要です。
緑ナンバー(一般貨物自動車運送事業)を取得するためには、一定の項目ごとに公示基準に適合することが必要です。①営業所、②車両数、③事業用自動車、④車庫、⑤休憩・睡眠施設、⑥運行管理体制、⑦点検及び整備管理体制、⑧資金計画、⑨法令遵守、⑩損害賠償能力などについて、それぞれ基準が設けられおり、これらの基準をクリアできるように事業計画を作成することが求められます。
公示基準をめぐって
1.営業所
①使用権原を示す資料があること、②農地法・都市計画法・建築基準法などの関係法令に違反しないこと、③規模が適切であること、④必要な備品を備えており事業遂行上適切なものであること、といったことが求められます。
実務上のポイント1
用途地域や都市計画区域の違いにより、一般貨物自動車運送事業に利用できる営業所を設置することができない地域があるため、候補地については事前調査をする必要があります。農地や市街化調整区域は、費用負担が少なく候補地としてあげられることが多いですが、建物を建てることができないため営業所の設置ができないことに注意が必要です。
実務上のポイント2
東京23区や横浜市・川崎市では、営業所と車庫の距離が通常の10キロ圏内ではなく、20キロ圏内まで拡大されています。そこで、営業所と車庫を別の場所に設け、車庫を費用負担の少ない市街化調整区域に設置するといった対応をすることもあります。この場合、運行管理上、点呼方法などに特別な配慮が必要になりますので、事前に十分な事業計画を検討することが大切です。
実務上のポイント3
営業所の写真や求積図を提出することを通じて、営業所がどのような形態のものか、営業所としての機能を有しているかなどについて確認がされます。
2.車両数
①営業所ごとに5両以上の車両を配置することが求められます。②けん引車と被けん引車を含む場合は、両方で1両と算定されます。
実務上のポイント4
車検証を提出することにより、使用権原のある車両が5台以上あるかどうかの確認がされます。
3.事業用自動車
①使用権原を示す資料があることのほか、②大きさや構造が、輸送する貨物に適切であるといったことが求められます。
実務上のポイント5
車検証を提出することにより、輸送予定の貨物にふさわしい事業用自動車として活用できるか否かが判断されます。
4.車庫
①原則として営業所に併設すること、②車両と車庫の境界及び車両間の間隔が50㎝以上あり、すべての車両が収容できること、③他の用途に使用されている場合、明確に区画されていること、④使用権原を示す資料があること、⑤農地法・都市計画法等の関係法令に違反しないこと、⑥前面道路の幅員が車両の出入りに支障がないこと、といったことが求められます。
実務上のポイント6
車庫の前面道路の幅員証明の提出が求められますので、前面道路を管理する自治体で幅員証明書を取得する必要があります。国道の場合は幅員証明書の提出は求められません。前面道路が私道の場合は、私道管理者の承認が必要となり、私道に通じる公道の幅員証明書の提出が必要になります。
実務上のポイント7
車庫の写真や求積図の提出を通じて、車庫の状況が確認されます。
実務上のポイント8
農地は耕作することが義務付けられていますので、一般貨物自動車運送事業のための車庫を設置することはできません。市街化調整区域については、建物を建てないかたちの車庫を設置することは可能になると考えられます。この場合、営業所を併設することはできませんので、運行管理上、点呼方法について別途検討する必要があります。
5.休憩・睡眠施設
①乗務員が有効利用できる適切な施設であること、②睡眠が必要な場合は2.5㎡以上の広さがあること、③営業所又は車庫に併設すること(特例あり)、④使用権原を示す資料があること、⑤ 農地法・都市計画法・建築基準法等の関係法令に違反しないこと、といったことが求められます。
実務上のポイント9
休憩・睡眠施設の写真や求積図の提出を通じて、休憩・睡眠施設の状況が確認されます。
6.運行管理体制
①運転者の確保、②運行管理者の確保、③運転者の労働時間の基準適合性、④運行管理に関する担当役員の設置、⑤車庫と営業所が併設できない場合における連絡体制及び点呼体制の整備、⑥事故防止に関する指導・教育体制の整備、事故に関する報告体制の整備といったことが求められます。
7.点検及び整備管理体制
①整備管理者の確保、②点検及び整備管理に関する担当役員の設置といったことが求められます。
8.資金計画
①資金調達ができることを示す資料があること、②車両費、建物費、土地費、保険料、各種税、運転資金について、それぞれ適切な見積りがされていること、③所要資金の全額以上の自己資金が常時確保されていること、といったことが求められます。
実務上のポイント10
資金計画については、申請時の残高証明書の提出と審査途中の残高証明書の提出の2度の残高証明書の提出を通じて、自己資金が所要資金を上回っているかどうかの確認がされます。
9.法令遵守
①貨物自動車運送事業に必要な法令知識を習得するとともに、その遵守を図ること、②社会保険及び労働保険の加入義務者が保険加入していること、といったことが求められます。
実務上のポイント11
新規許可時に指導講習の実施、運輸開始届出後1か月~3か月以内に巡回指導の実施がされます。巡回指導の際に、一般貨物自動車運送事業者として適切に事業遂行がされているかどうかの確認がされ、改善要望に応じることができれば、重大事故や第三者通報などがない限り、運輸支局による監査を受けることはありません。
10.損害賠償能力
自賠責または自賠責共済に加入するほか、任意保険に加入するなど「十分な損害保障能力」を有することが求められます。
実務上のポイント12
車両について、対人無制限の保険加入が求められ、加入していることがわかる資料の提出が必要になります。
手続きの流れ
1.申請書の作成
2.営業所を管轄する地方運輸支局にて、申請書の提出
3.法令試験の実施と申請内容の審査
4.許可後1年以内に、
(1)運行管理者・整備管理者の選任届
(2)運輸開始前の確認報告
(3)車両の登録
(4)運賃料金の設定
(5)運輸開始
事業計画の変更
自社の経営状況や物流状況を踏まえ、営業所や車庫の新設・移転・廃止、事業用自動車の増車・減車などの経営判断をしなければならないときがあります。このとき、行政庁から認可されている事業計画の内容に変更が生じるので、申請や届出を通じて、変更内容について情報提供をする必要があります。これが、事業計画の変更といわれる手続です。
【営業所】
物量の増加にともなって新たに営業所を設置したり、従来の営業所を廃止し新しい営業所に移転したりするなどして、顧客ニーズに対応しなければならないことがあります。営業所を新しく設置するためには、事業計画の変更が必要です。①新しい営業所の名称・場所・電話番号、②運行管理や整備管理の体制、③ドライバーの確保に関する事業計画が求められます。また、営業所を機能的に運営できるかどうかを確認するために、①使用権原を証する書類、②農地法・建築基準法・都市計画法などの関係法令に違反しないことの宣誓書、③営業所の案内図、見取図、平面図、写真の提出が求められます。
【車庫】
車庫は原則、営業所に併設する必要がありますが、併設できない場合は、営業所と車庫の距離について特例が認められています。営業所を東京23区、横浜市、川崎市に設置する場合は、20㎞以内、それ以外の地域に設置する場合は、10㎞以内であれば、営業所に併設していない車庫を設置することができます。
このような特例を活用して、新しく営業所を設置することなく、車庫の新設と増車対応により、顧客ニーズに対応することが可能です。経済的観点からしても、車庫を新設する方が、営業所を新設するよりも経済的負担は少なく、少ない投資で大きな収益をあげることができます。車庫の新設にも、事業計画の変更が必要です。①新しい車庫の収容能力、幅員、位置、②運行管理や整備管理の体制に関する事業計画が求められます。また、車庫を機能的に活用できるかどうかを確認するために、①使用権原を証する書類、②農地法・建築基準法・都市計画法などの関係法令に違反しないことの宣誓書、③車庫の案内図、見取図、平面図、写真、④車庫前面道路の幅員証明書の提出が求められます。
【増車・減車】
自社の輸送力を強化するために、自動車の配置台数を増加させなければならないことがあります。また、古くなった自動車は新しい自動車と入れ替える必要もでてきます。このようなニーズに対応するためには、増車・減車に関する事業計画の変更が必要です。最低保有台数5台を下回る減車かどうか、駐車場の収容スペースが確保されているかなど、一定の基準をクリアする必要があります。
事業報告書、事業実績報告書の提出
一般貨物自動車運送事業は、一度許可されると、事業の廃止や事業の休止の届出をしない限り、半永久的に継続し、更新制度もありません。一般貨物自動車運送事業者に求められることは、毎事業年度の経過後100日以内に事業報告書を提出することと毎年4月1日から3月31日までの実績を事業実績報告書として、7月10日までに提出することです。管轄の運輸支局は、これらの報告書を通じて、事業者の実態を把握することができます。