遺言書は、大切にしてきた財産を相続人や相続人以外の方に、確実に譲り渡すことを可能にします。遺言書を作成しておくと、相続をめぐる家族間のトラブルを防ぐことができます。遺言書に示される財産のゆくえが、残された相続人が財産を分ける際の拠り所になるからです。遺言書を書いておくことは、家族に対する最期の思いやりになります

遺言書がある場合

遺言書がある場合は、遺言書に示されている通りに、相続手続をすすめます。遺言者自らが手書きした遺言書(自筆証書遺言)と公証役場で公証人が作成する遺言書(公正証書遺言)とではその後の手続きに違いがあります。
遺言者自らが手書きした遺言書の場合は、保管制度を利用している場合を除いて、相続手続きを開始するにあたって、原則、家庭裁判所による検認手続を経る必要があります。公証役場で公証人が作成した遺言書の場合は、検認手続を経ずに相続手続をすすめることができます。
いずれの形式の遺言書であっても、遺言執行者の定めがあると相続手続は遺言執行者によってすすめられます。遺言執行者は単独で、遺言書に記されている遺言内容を実現できますので、家族間のトラブル回避にも役立ちます。遺言執行者の定めは、相続人の相続手続に関する負担を軽減することにつながります。

遺言書がない場合

遺言書がない場合は、相続人間で遺産分割協議をして、相続財産の分け方を決めます。相続人間で、遺産の分割方法について意見が一致すれば問題はないのですが、利害関係のある相続人全員の意見が一致し、分割協議書に押印するかどうかは、その時にならないとわかりません。
遺言書の作成をしておけば、相続人間で、遺産分割協議をすることなく、遺言書に示されている内容にしたがって、相続手続きができますので、相続人の間で、相続財産をめぐるトラブルがなく財産のゆくえが決まることになります。

公正証書遺言

相続人のうちの一人が遺言書の内容に反対して、裁判を通じて争うことが予想されるなど、相続をめぐって、重大なトラブルが考えられる場合は公正証書による遺言書の作成をお勧めいたします。
公証人が作成過程において、遺言者の意図や真意を確認したうえで、遺言書の作成がされますので、相続開始後に遺言者の真意が争われる可能性が低くなります。
公正証書遺言の作成により、自分の財産を、譲り受けてもらいたい人に確実に譲り渡すことが可能になります。

自筆証書遺言が変わります

自筆証書遺言は、遺言者の最終意思であることを確認するため、厳格な方式として、本人自らが全文、日付及び氏名を手書きすることに加えて、押印(認印でも可)することが求められています。
平成31年1月13日からは、自筆証書遺言の要件が緩和され、財産目録に関しては署名と押印があれば、本人による手書きをする必要がなくなりました。このことにより登記簿謄本のコピーの添付で不動産の特定をしたり、ワープロ文字で財産目録の作成をすることが可能になりました。
令和2年7月10日からは、法務局による自筆証書遺言の保管制度もはじまりました。公正証書遺言と同様に、家庭裁判所での検認手続きが不要となり、公的機関での保管がされることから、紛失や改ざんのおそれがなくなります。

行政書士の役割

家族全員で平等に遺産を分けるから、うちの家族は、遺言書作成をしなくとも大丈夫と家族全員のコンセンサスがあったとしても、いざ、相続がはじまると、遺産をめぐって意見の対立が生まれることは多々あります。
平等に分けるといっても、相続財産に不動産が含まれていると、事実上、平等に分けることができませんので、結局、売却して、お金を平等に分ける方法しかなく、家族の思いをかなえることができない可能性もあります。
共有関係にすることにより課題解決を図る方法も考えられますが、共有関係は世代が変わるごとに、権利者が増え、権利者が増える分だけ、管理や処分に手間がかかります。
そこで、遺言書をどのように記せば、自分の思っている通りに財産を分けることができるのかということを、遺言者やその家族と一緒に検討することが、行政書士の重要な役割となります。
戸籍や財産の調査、法務局での保管制度活用のための手続き、公証人との打ち合わせ、といった遺言書作成のための準備をすることも行政書士の役割です。
遺言書作成をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
(報酬)
遺言書作成
7万5,000円(税込82,500円)
※相続人の数や相続財産の価格によって行政書士報酬が発生することがあります。詳細はお問合せください。
※自筆証書遺言の場合は、保管手数料3,900円が、公正証書遺言の場合は、財産額に応じた公証人手数料が、別途加算されます。